SDGsの課題として、現在様々な場面で活躍している企業の取り組みも重要になり、企業動向と密接な関係性を持っています。
その中で、ESG問題と呼ばれるものがあります。
本記事では、このESG問題を中心に解説していきます。
ESG問題とは?
ESG問題は以下の項目になります。
①環境問題(Environment)
②社会問題(Social)
③組織統治問題(Governance)
自然災害はピジネスの持続可能性や成長を脅かす要因となるものです。
しかし、ビジネスの成長を脅かすのは自然災害だけではありません。
自然災害を含む環境問題(Environment)のほか、社会問題(Social)と組織統治問題(Governance)もまた、ビジネスの制約要因となるものです。
そして、これらの頭文字を取って総称したのが「ESG問題」です。
ESG問題は、ビジネスの持続を脅かす問題であるとともに、わたしたちが暮らす社会の持続可能性を脅かす問題でもあります。
ESG問題は、ビジネスと社会の両面で、SDGsの目標「持続可能な世界実現」と密接に関わっています。
自然災害や資源の枯渇をはじめとする環境問題(E)は、事業拠点の被災や資源価格の高騰といった形でビジネスの成長を脅かします。
貧困や少子化をはじめとする社会問題(S)は、顧客の購買力低下や市場の縮小といった形でビジネスの成長を脅かします。
違法なサービス残業や不正会計をはじめとする組織統治問題(G)は、法的規制の化といった形で企業の自由を狭め、ビジネスの成長を脅かし経済活動のグローバル化に伴い、ESG問題の種類とバリエーションは増加しています。
それは、ビジネスの成長を阻害する要因が増えていることを意味します。
ESG問題には、自然災害のように「認識しやすい問題」だけでなく、貧困のように「認識し難い問題」も含まれます。
成長とリスクの低減を両立させるためにも、企業にはこれらESG問題がビジネスに与える影響をリサーチし、具体的な対策をとることが求められています。
ESG問題を経営課題として捉える
ESG問題がビジネスの成長を脅かす制約要因である以上、企業にとって、ESG問題への対応は「経営課題」となります。
リスクを低下させ、ビジネスを成長させるためにはESG問題を「経営課題」として理解し、ビジネスを通してその解決に取り組むことが必要です。
そして、この取り組みこそがSDGsの実践になります。
貧困や飢餓、気候変動問題など、ESG問題の多くはスケールの大きさや問題の複雑さから、「アタマで大変なコトはわかっていても、実感がわかない」ことが多々あります。
そして、「実感がわかない→経営課題にできない→実際の取り組みにつながらない→リスクの低下と成長機会につながらない」という負のサイクルに陥りがちです。
ESG問題を経営課題として認識するためには、ESG問題をそのまま捉えるのではなく、「ESG問題がビジネスに与える影響」を想定し、「自分ごと化=経営課題化」する必要があります。
この時に重要なのが、次のポイントです。
①大きなESG問題を想定する
(例:気候変動による台風や猛暑の多発化)
②①の影響がビジネスに与える影響を想定する
(例:台風、猛暑による稼働日減少、生産性低下)
③②の影響が自社に与える影響を想定する
(例:稼働日減少、生産性低下による収益性の悪影響)
大きなESG問題は必ず自社とそのビジネスに影響を与えます。
だからこそ、ESG問題を経営課題として理解し、具体的なアクションを起こすことが、リスクの低減とビジネスの成長の両立に不可欠になります。
ESG問題の発生源を企業も理解する
ビジネスを通じてESG問題に取り組み、SDGsの達成とリスクの低減、成長を実現するためには、ESG問題が生まれる「メカニズム」を理解することが重要です。
これまでのビジネスは大量生産、大量消費、大量廃棄を基本とし、莫大な資源を必要としてきました。
その結果として、環境汚染や資源の減少・枯渇、気候変動による自然災害の多発化などが進み、環境問題(E)が深刻化しました。
また、経済成長は物質的なゆたかさをもたらす一方、企業の競争環境の激化によって経済格差や人権侵害、社会的孤立、少子化などが進み、社会問題(S)が深刻化しました。
これらはいずれも企業の経済活動によって生じた問題であり、企業の組織統治(G)を基点として発生したものです。
つまり企業のビジネスのあり方が環境問題(E)や社会問題(S)を生み出しています。
企業の活動はESG問題を発生させる可能性と隣り合わせの関係にあります。
企業が環境と社会に配慮したビジネスを行わなければ、企業自体がESG問題の発生源となってしまいます。
問題の多くは法的問題や企業倫理の問題に関わっています。
そのためESG問題の発生源となった企業は、法的、社会的制裁を受けるリスクが増加します。
それは同時に、企業がSDGsの実現から遠ざかることを意味しています。
企業はESG問題の発生メカニズムを理解し、自社がESG問題の発生源にならないように、予防のための取り組みとその取り組み状況のチェックを継続して行う必要があります。
SDGsに関連するキーワードを理解しておく
企業が考えるべきSDGsに関連するキーワードは以下の項目です。
①CSR (Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)
②CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)
③ソーシャルビジネス(SocialBusiness)
④エシカルビジネス/消費(EthicalBusiness)
SDGsには次の①〜④のような関連するキーワードがあります。
混乱を招かないよう、SDGsとこれらのキーワードの意味の違いを正しく理解しておく必要があります。
その違いとは、SDGsが「目標(What)」であるのに対し、これらのキーワードは「考え方」および目標実現のための「方法論(How)」であるということです。
①は、自社の利益追求だけではなく、社会と環境に対して責任ある経営をするべき、という考え方です。
CSRには、法令順守のように企業を防衛する「守るCSR」と、ESG問題に有効な製品の提供のように価値を創造する「伸ばすCSR」があります。
②は、企業がESG問題に取り組み、社会と共有できる価値を創造するべき、という考え方です。
これはCSRの価値創造機能(伸ばすCSR)にフォーカスしたものです。
③は、ESG問題(特に社会問題)の解決を目的としたビジネスの考え方です。
④は、英語の「ethical(倫理的な)」に由来し、サプライチェーンにおけるESG問題に配慮したビジネスや消費の考え方です。
これらはSDGsという「目標(What)」を実現するための「How)」であり、SDGsに対してアプローチするための「考え方」を説明するものです。
自社のSDGsの実践を整理、説明する上で正しく理解しておきましょう。
まとめ
ここまでで企業が抱えるビジネスにおけるESG問題を取り上げました。
・ESG問題を把握/理解する必要性
・ESG問題を経営課題に取り込めるか
・自社がESG問題の発生源にならないためにどうするか
・ESG問題から経営に関するSDGs関連キーワードを理解する
SDGsに取り組む企業は、ESG問題から把握/理解することでSDGsへの貢献に繋がると考えます。