2018年1月に厚生労働省が『副業・兼業の促進に関するガイドライン』を発行以降、会社員も副業を始めている人は年々増加しています。
かつては、日本企業は終身雇用を守っていたため、副業・兼業は原則として禁止してきました。
しかし、近年では副業解禁により働き方が見直されてきており、働き方改革が徐々に進行してきています。
今回の記事では、昨今の副業に関する事情、副業に関するメリット・デメリットについて解説していきたいと思います。
副業の現状
2017年度に厚生労働省が実施した副業に関する調査では、本業以外に仕事している人は7.2%という結果になっています。
また、年代別に確認したところ、副業をしている人は30代から50代にかけて多い傾向が見られます。
3つ以上の副業に取り組む人はごくわずかとなっており、副業の数が2つまでという人は大多数の94%を占めています。
このような調査結果から副業の目的として、
・収入を増やしたいから
・1つの仕事だけでは収入が少なく、生活自体ができない
・自分が活躍できる場を広げるため
こういった理由が挙げられています。
また、副業の業種については、労働収入型となっているサービス業や自身のスキルセットを活かすことができる専門的・技術的職業の割合が多い傾向が見受けられます。
副業によって得られるメリットとは?
副業に関して検討するポイントは、労働者側と企業側の2つの観点からメリット・デメリットを理解する必要があります。
そのため、ここではまずメリットから解説していきます。
副業における労働者側のメリット
副業に取り組むことによって、労働者側は以下の内容がメリットになります。
・収入の増加
・スキルや経験の獲得
・起業・転職に向けた準備
それぞれ解説していきます。
収入の増加
やはり、副業の目的として大多数となっているのが収入の増加になります。
実際に、本業以外に収入の柱が増えること自体、大きなメリットと呼べるでしょう。
スキルや経験の獲得
本業だけでは得ることができないスキル・経験を獲得することにより、今後の自身のキャリアアップにつなげることもできます。
また、本業と類似した内容に取り組むことがあった場合、本業自体へのスキルアップも見込めることになります。
起業・転職に向けた準備
本業での収入にあることで、ローリスクで将来の設計を整えることができます。
副業自体は、個人的な選択が非常に強いため、本業とは異なるスキルを獲得することによって転職活動のストロングポイントに変化させることができます。
副業における企業側のメリット
次に、副業における企業側のメリットについて解説していきます。
企業側にとって以下の内容がメリットとして挙げられます。
・労働者のスキルアップ
・優秀な人材の確保
・事業拡大につながる
主に3つのメリットとなります。
労働者のスキルアップ
単純に本業以外でも収入を上げるための活動を行なっているため、副業を通して新たな知識やスキル・経験を獲得することができ、企業にとっても様々な恩恵を受けることになります。
社員のスキルアップは企業にとっても課題となるため、大きなメリットと言えるでしょう。
また、副業を通して本業へのやりがいに転じる人も存在するため、企業内で主体的に活躍する社員を抱えられることになります。
これにより、社員同士の競争環境を作り出すことができ、様々な人材育成向上を期待できます。
優秀な人材の確保
副業自体を企業側が認めることで、従業員の定着率も向上する場合があります。
従業員の収入的拘束を解放したことにより、優秀な人材の流出防止につながることも企業側にとってメリットになります。
また、外部から副業を通して転職にたどり着いた人も存在するため、副業が活性化されると、社会全体の転職における人材価値が相対的に高まり、採用する人材も優秀な人材である確率は高まります。
事業拡大につながる
副業によって社員全体でも人脈拡大が起きることがあります。
つまり、そういった社員を抱えることができた企業は、事業拡大に関する機会創出を獲得できる可能性があります。
副業によって生じるデメリットとは?
ここまで副業によって得られるメリットを解説してきましたが、当然それらによって生じるデメリットも存在します。
こちらも労働者側と企業側でデメリットをそれぞれ確認していきましょう。
副業における労働者側のデメリット
労働者側のデメリットとして、以下の内容が挙げられます。
ワークライフバランスの維持困難
物理的仕事量と時間が膨大となり、体調管理と本業との折り合いが難しくなります。
また、パーソナル総合研究所の調査では、本業と副業の過重労働により体調を崩した、と回答している人が13.5%存在しています。
雇用保険等適用対象外の可能性
自身で開業届あるいは会社設立関連の書類を提出し、環境を整えている人であれば異なりますが、一般的に単純な副業をしている場合は適用されない可能性があります。
副業における企業側のデメリット
次に、副業における企業側のデメリットについて解説していきます。
個人的には企業のリスクが副業によって高まっているように感じます。
職務専念義務に関するリスク
これは正直本末転倒だとは思いますが、副業を本業終わりあるいは休日に取り組むため、十分な休息をとることができず、本業に支障をきたすケースも存在します。
というよりも、これが最も多いパターンだと思います。
この場合は、企業側として生産性の低下を意味します。
離職のリスク
副業に取り組み続けた結果、会社に所属していた以上の収入を獲得する人が一定数毎年現れます。
そのため、その人が社内で優秀な人材であった場合、本業を離れて副業に専念することになります。
結果として、退職・離職というケースになるため、企業側としては人的コストの考え方を正していかなければならないです。
機密情報流出のリスク
副業を解禁するにあたり、情報漏洩のリスクも考えなければなりません。
副業するとしても、社員自体が秘密保持義務や競業避止義務などを理解していない場合もあります。
そういった企業の機密情報が関わる可能性があるため、副業解禁の流れで情報の取り扱いに細心の注意を払う必要があります。
副業におけるトラブル対策
このようにそれぞれの観点から副業のメリット・デメリットを解説してきました。
これらのポイントを改めて考えると、副業へのトラブル対策がいくつか浮き彫りになってきます。
労働者側と企業側の両方で意識しなければならないトラブル対策は、労働時間の管理体制を整えることです。
労働者側も本業をおろそかにすることは企業との就業規則に反するため、本業と副業の線引きはしっかり基準を設けて取り組まなければなりません。
また、企業側としても本業に関する業務過多により、労働者の収入に関する補填を残業手当で補うケースが多いです。
つまり、企業側は本業における労働時間の管理体制を改めて、収入も副業に頼ることのない状態を整えておかなければいけません。
そして、これは企業側のトラブル対策ですが、副業自体はこれから促進されていくため、社員の評価方法の見直しが必要になります。
給料体制をどれだけ改善するかは評価の影響によって変化します。
まとめ
ここまで、副業における労働者側・企業側に関するメリット・デメリット、そしてトラブル対策について解説してきました。
また、株式会社インテージリサーチによる副業調査によると、副業に関心を持つ人は回答者の58%になるそうです。
副業は、収入を増やすためだけの手段ではなく、自己実現や企業依存のリスク回避など、様々な目的に対する解決策につながっています。
そのため、副業の目的は今後も多様化し、働き方も多様化されていきます。
これからの働き方を意識する時代になってきたため、社会人が改めて稼ぐ意識の変革を求められてきています。
副業に限らず、ビジネス全体の在り方が変わる転換期にあるため、個人の働き方を常に考えながら環境によってスキルを利用して活躍できる人材が生き残るように感じます。
これからの働き方に振り落とされないように意識して業務に励みましょう。