SDGs

日本が掲げるSDGsにおける5つの主要原則と企業事例

SDGsへの取り組みは企業でも活発に行われています。
また、取り組みに対する成果によって企業を知ること以上にSDGsへの貢献方法なども見えてくるかもしれません。

特に、経営者にとって自社がどのような取り組みをするべきか、何ができるか見極める参考になればと思います。

ジャパンSDGsアワードとは

日本政府が表彰する「ジャパンSDGsアワード」達成に向けて取り組もうとしたときに参考になるものがあれば、より具体的なのかをイメージしやすくなります。

そのときに参考になるのが、「ジャパンSDGsアワード」を受賞した企業や団体の取り組みです。

ジャパンSDGsアワードとは、内閣総理大臣を本部長とSDGs推進本部がSDGs達成に貢献する優れた取り組みを行う、日本に拠点がある企業団体(NPO・NGO、地方自治体、学術機関各種団体など)を表彰するもので、2017年に第1回が開催されて以来、毎年行われています。

最も優れた取り組みには総理大臣による「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」(1案件)、SDGs推進本部長賞には選定されなかったものの、優れた取り組みとされたものは、官房長官と外務大臣による「SDGs推進副本部長(內閣官房長官)賞」「SDGs推進副本部長(外務大臣)賞」(それぞれ1〜3案件)が授与されます。
そのほかの特筆すべき功績があったと認められる企業・団体については、「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」が授与れます。
特別賞が授与される数は決まっていませんが、実施された第3回までを見ると毎年6〜8の案件が受賞しています。

その評価は、日本政府が示したSDGs実施指針における5つの主要原則である「普遍性」「包摂性」「参画型」「統合性」「透明性と説明責任」に基づいて行われます。

日本が掲げるSDGsにおける5つの主要原則

2016年12月22日に日本政府の持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が決定した「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」で、SDGsに取り組むにあたって課題や分野に関係なく適用されるべき「5つの主要原則」を掲げています。

SDGsに関する新たな取り組みや、これまでやってきた取り組みを修正する際には、この「5つの原則」に沿わなければいけないということです。

普遍性

国内実施と国際協力の両面で率先して取り組み、国内の取り組みでも国際目標達成に向けた努力としての側面があります。

逆に国際協力にも繁栄の基盤を支える意義があることを意識し、また、個別のテーマでも国内実施と国際協力を連携することが有意義であることを認識して取り組む必要があります。

包摂性

「誰一人取り残さない」は、SDGsの根底に流れる基本的理念です。
あらゆる課題への取り組みにおいて、脆弱な立場に置かれた人々にも焦点を当てることが求められています。

また、国際社会における人権の尊重とジェンダー平等は、SDGsの全目標の実現に不可欠なものです。
あらゆる取り組みにおいて常にそれらの視点を確保し施策に反映されていることが重要です。

参画型

脆弱な立場におかれた人々を含む一人ひとりが、施策の対象として取り残されないことを確保するのみならず、自らが当事って主体的に参加し、持続可能な社会の実現に貢献できるよう、あらゆるステークホルダーや当事者の参画を重視し、全員参加型で取り組むことが求められています。

統合性

SDGsは、経済・社会・環境の3分野の相互関連性・相乗効果を重視しつつ、統合的解決の視点を持って取り組む必要があります。

経済だけ重視した取り組みも、環境・社会に配慮するあまり経済的に発展しない取り組みでもいけません。

透明性と説明責任

全員参加型の取り組みであることを確保するうえでも、透明性と説明責任は重要です。

日本の取り組みの実施の状況について高い透明性を確保して定期的に評価・公表して説明責任を果たし、新たな施策の立案や施策の修正に当たっては公表された評価の結果を踏まえて行います。

企業の取り組みとSDGs貢献のメリット

ここでは、ジャパンSDGsアワードにも受賞した企業3つを取り上げます。

受賞した企業

①日本フードエコロジーセンター
②日本リユースシステム株式会社
③株式会社大川印刷

それぞれの企業の取り組みとSDGs貢献へのメリットを記載します。

日本フードエコロジーセンター

日本フードエコロジーセンター(J.FEC)は、関東近郊の180以上の事業所から食品残渣を受け入れ、それを元に養豚用のリキッド・エコフィード(食品残渣から製造された液体飼料)を製造して、主に関東近郊の契約養豚事業者に提供する従業員35名(パートタイマーを含む)の中小企業です。

エコフィードは通常の輸入飼料(トウモロコシ、こうりゃんなど)の半分以下の価格のため、畜産農家の経営体質強化に貢献するだけでなく、日本の飼料自給率の向上にも貢献しています。

また、販路の確保に契約養豚事業者や食品関連事業者と連携して、食品残渣由来のエコフィードで育った豚の肉のブランド化に取り組み、百貨店やスーパーでブランド豚肉として販売するなど、循環型のビジネスモデルを構築しています。

同社のエコフィード事業の循環型ビジネスモデルは、食品ロスを飼料にすることを通じて、CO2の削減や日本の食料自給率向上、の食糧不足の解消など、さまざまな問題の解決を実現するための極めてSDGs的な取り組みといえます。

日本フードエコロジーセンター(J.FEC)はSDGsに取り組んだことで以下のメリットを享受しています。

SDGsの取り組みによるメリット

①食品関連業者と養豚業者の双方から収益を得るビジネスモデル構築
②社会貢献する実感が従業員のモチベーション向上に繋がる
③多くの企業との連携がビジネス創出のきっかけになる

日本リユースシステム株式会社

日本の家庭で回収した不要となった古着を開発途上国へ送り、誰かに使ってもらう (リユース)だけでなく、開発途上国の子供たちにポリオワクチンが届けることができる「古着deワクチン」いうビジネスを行うのが「日本リユースシステム」です。

具体的な仕組みは、古着を整理したい人が専用回収キットを購入します。

その購入代金からワクチン代金が捻出され、認定NPO法人世界の子どもにワクチンを日本委員会を通じて、専用回収キットひとつにつき5人分のポリオワクチンが寄付されるというものになります。

専用回収キットの封入・発送作業は福祉作業所に依頼しており、障害者の雇用創出に貢献しています。
開発途上国に送られた古着は現地で安価で販売するため、現地でビジネスと雇用を生むことにも貢献しています。

日本リユースシステム株式会社はSDGsに取り組んだことで以下のメリットを享受しています。

SDGsの取り組みによるメリット

①日本で回収した古着を開発途上国のワクチン寄付に結びつけた
②日本の障害者、開発途上国の雇用を生み出す
③取り組みが評価されて多くの協業を実現

株式会社大川印刷

全社員にSDGs教育を実施し、従業員主体で課題を解決するプロジェクトチームを立ち上げてSDGsを推進していることで知られるSDGsの先進企業です。

従業員からのボトムアップ型でSDGs経営戦略を策定し、「本業での社会的課題の解決こそが使命」として事業活動を行っています。

「ゼロカーボンプリント」を展開する国内唯一の印刷会社で、FSC森林認証紙を積極的に使うことで違法伐採防止に貢献するほか、2017年には工場の使用電力を自然エネルギー100%に切り替える「再生可能エネルギー100%印刷プロジェクト」をスタートしています。

株式会社大川印刷はSDGsに取り組んだことで以下のメリットを享受しています。

SDGsの取り組みによるメリット

①主体的に価値を生み出し従業員のモチベーション向上
②インターンシップにて注目度が上がり新卒採用プラス効果
③SDGs貢献の印刷物が注目されて新規受注増加&売上増加

まとめ

多くの企業がSDGsに取り組む中、事業に対して様々な効果が出始めている状況です。

SDGsへの貢献は多くのメリットが享受できるほか、最も経営に重要な一つの従業員モチベーション向上が特に大切だと感じます。

従業員のモチベーション向上によって好循環が生まれるため、今後企業が目指すべきSDGs貢献の一つは自社の社員に対する改革からかもしれません。