昨今、国/企業/個人に限らず様々な場面でSDGsへの取り組みが表面化されてきました。
大きな枠組みとしてESG問題が存在しますが、このESG問題に対して世界ではどのような取り組みをされているか理解する必要があります。
本記事では、世界がSDGsへどのような取り組みを行っているかについて解説していきます。
Contents
新型コロナウィルスがSDGsへ深刻な影響
新型コロナウイルスの世界的大流行によって、2020年8月末時点で、全世界の死者数は約85万人、感染者数は2,500万人超となり、SDGsの進捗にも悪影響を与えています。
国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN:Sustainable Development Solutions Network) と独ベルテルスマン財団が2020年6月に公表した「持続可能な開発レポート2020」によると、新型コロナウイルスは、世界の最貧な立場に置かれた人々に深刻な影響を及ぼしているを鳴らしています。
最も大きな打撃を受けているのが、子どもや高齢者、障害者、移民、難民、最貧困層の人々など、最も脆弱な立場に置かれた人々です。
2020年には、およそ7,100万人が極度の貧困に陥るとみられており、1998年以来初めて世界で貧困が増加するおそれが出てきています。
ワクチン開発において世界の国々が協力を深めたり、大気汚染が解消されるなどのプラスもないわけではありませんが、この危機はSDGsの進捗に悪影響を及ぼしています。
地域別でのSDGs達成状況
「持続可能な開発レポート2020」にて各国の達成状況を見てみると、世界全体のSDGsの進捗は順調とはいえず、「達成できている」と評価されている目標はまだ少ないのが現状です。
地域別で見ると、サハラ以南のアフリカ、オセアニア半球に位置するエリアは、ほとんどの項目で「達成にはほど遠い」状況であることがわかっています。
世界の国々のうち北半球に位置する国々よりも南半球に位置す国々に途上国が多い、いわゆる南北問題が問題になっています。
SDGsの達成度についても南北格差があることが浮き彫りになっており、経済発展の遅れがさまざまな悪影響を与えていることがわかります。
SDGsの17の目標のうち、目標①が「貧困をなくそう」になっているのは、貧困がさまざまな問題を解決するうえでとても重要だからでしょう。
世界のSDGs達成度について
ここでは、以下の4つの地域別におけるSDGs達成度を確認していきます。
①アメリカ
②中国
③北欧諸国
④アフリカ諸国
それぞれの状況を解説していきます。
アメリカの動向
「持続可能な開発レポート2020」では、アメリカのSDGs達成度は31位でした。
世界最大の経済大国で、軍事大国でもあるアメリカはSDGsでも相応の貢献が求められるはずですが、残念ながら近年は逆行するような動きが目立っています。
2017年1月に大統領に就任したドナルド・トランプ氏は就任演説で「貿易、税制、移民、外交に関するあらゆる決定は、米の労働者や家族の利益になるようにする」と「アメリカ・ファースト」を宣言しました。
就任直後の2017年6月には、「中国、ロシア、インドは何も貢献しないのに、アメリカが何十億ドルも払う不公平な協定だ」と不満を表明し、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱を宣言しています。
2019年11月には離脱するための手続きを開始、2020年11月4日に正式に離脱する予定です。
また、新型コロナウイルスの対応が、「中国寄り」と非難し、WHO(世界保健機関)から脱退することも正式に通告しました。
SDGsが目標「パートナーシップで目標を達成しよう」を掲げて、世界的な取り組みとしてさまざまなレベルでのパートナーシップを求めているのは明白です。
しかし、最も影響力が大きいアメリカが「自国優先」を強めていることは、2030年の達成を目指す世界にとって懸念材料になるかもしれません。
中国の動向
「持続可能な開発レポート2020」では、中国のSDGs達成度は48位でした。
近年、急速な経済によって衛生環境の改善、大学進学率・識字率の向上などの分野で目覚ましい成果を挙げましたが、過去数十年で約8億人が貧困から抜け出したのは「人類史上なかったほどの偉大な成果」と称されるほどです。
その中国がSDGs達成に積極的な姿勢を内外に示していることは日本ではあまり知られていません。
たとえば、2015年の国連総会で習近平国家主席が発展途上国支援のために20億ドル(当時のレートで約2,400億円)規模の「南南協力援助基金」の設立を表明するなど、さまざま国際協力に積極的です。
同時に、経済成長のひずみから生まれる大気汚染や海洋汚染などの国内問題についても中国は切迫感を持って取り組んでいます。
電気自動車(EV)や再生可能エネルギーを国策として積極的に導入することで、国内問題を技術革新につなげ、経済成長とパリ協定履行を両立させる姿勢は、世界経済フォーラムのブレンデ総裁などからも高く評価されています。
また、「BATH」と呼ばれる世界的企業を生んだ中国のイノベーション力によるSDGsへの貢献も期待されています。
一方で、2020年9月には、民主化運動に揺れる香港や100万人以上のウイグル人が拘束されているという新疆ウイグル自治区での人権問題をめぐって、EUやイギリス、カナダなど西側諸国が国連人権理事会で中国を非難するなど、国際社会の批判が高まっており、世界中から今後の動向が注視されています。
北欧諸国の動向
参考になるのは、北欧諸国の先進的な取り組みです。
「SDGs達成度ランキング」では、1位スウェーデン、2位デンマーク、3位フィンランドと上位は北欧の国が占めています。
北欧諸国はSDGsが採択されるはるか前から持続可能なを目指して本気で取り組んできました。
その背景には、北極圏に近いため、気温上昇によって氷が溶けるスピードが速くなっているなどの異変を肌で感じやすく、環境の変化を「自分ごと」として考える土壌があったからといわれています。
SDGs達成度3位のフィンランドは、国連でSDGsが採択されるよりもずっと前の1993年から「持続可能な開発に関する国家委員会」を設置して、国際的に高い評価を得ています。
デンマークでは、「UN17ビレッジ」という先進的な取り組みが進んでおり、世界的に注目を集めています。
SDGsの17の目標を達成できるようなビレッジを建設するプロジェクトで、2023年に首都コペンハーゲン南部に完成予定です。
スウェーデンも国が主体となり持続可能な社会の推進を行っており、スウェーデン発祥の家具量販店イケアは、製品の60%上に再生可能な素材を利用するほか、女性や移民などダイバーシティに富む職場環境づくりなど、SDGsの実現に力を入れていることで知られています。
アフリカ諸国の動向
SDGsが始まった時点で、アフリカ地域は他の地域に比べて多くの困難を抱えています。
SDGs達成度ランキングを見ると、下位はアフリカ諸国で占められているように、その状況は依然変わっていません。
とくにさまざまな面で厳しい状況に置かれているのが、南のアフリカ (サブサハラアフリカ)です。
インフラが脆弱であるため、地球温暖化による干ばつや洪水などが起こると甚大な悪影響が及びやすく、HIV/AIDSや致死率が高いエボラ出血熱などに悩まされています。
一方で、アフリカでは最先端テクノロジーを生かしたサービスが一気に普及し、人々の生活を大きく変えるケースも出てきています。
まとめ
ここまでで世界の地域別でSDGsの達成度を確認/解説してきました。
①アメリカ
②中国
③北欧諸国
④アフリカ諸国
やはり、これまでの文化や経済状況、地域ごとに存在するESG問題など、特色が現れた優先課題と解決案がありました。
これらを把握した上で、日本はどのような優先課題を掲げ、SDGsへの取り組みやビジネスにおける取り組みに活用していくべきか改めて見つめ直す必要があると感じます。