ビジネスにおけるSDGsといった言葉は、現在トレンドワードとして浸透し始めています。
しかし、その内容について正しく理解している人はまだ多くありません。
SDGsを様々な側面から切り取り、より多くの人が深く理解できるよう解説します。
本記事では、SDGsにおける17の目標のうち、目標8について詳しく解説していきます。
Contents
SDGsとは
2015年9月、ニューヨークの国連本部で行われた国連持続可能なサミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
その中核になるのがSDGs(エスディージーズ)です。
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連に加盟する全193ヵ国が達成を目指す2016年から2030年までの国際目標です。
以下の章でまとめてありますが、全部で17の目標が設定されています。
いずれの目標であっても、シンプルな表現で記載されていますが、裏を返せばこれらの目標を世界が解決しなければならない問題が存在することになります。
SDGsの17目標とは
SDGsとして各目標である17の項目を以下にまとめました。
【目標1】貧困をなくそう
【目標2】飢餓をゼロに
【目標3】すべての人に健康と福祉を
【目標4】質の高い教育をみんなに
【目標5】ジェンダー平等を実現しよう
【目標6】安全な水とトイレを世界中に
【目標7】エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
【目標8】働きがいも経済成長も
【目標9】産業と技術革新の基盤をつくろう
【目標10】人や国の不平等をなくそう
【目標11】住み続けられるまちづくりを
【目標12】つくる責任、つかう責任
【目標13】気候変動に具体的な対策を
【目標14】海の豊かさを守ろう
【目標15】陸の豊かさも守ろう
【目標16】平和と公正をすべての人に
【目標17】パートナーシップで目標を達成しよう
現在企業でも数多くの持続可能な開発から目標を達成する動向が見受けられます。
もちろん、17目標すべてを達成する動きができるわけではありませんが、企業体質や企業の提供する価値に合わせてそれぞれの目標を組み合わせる形で取り組んでいる状況です。
以下の章から、目標8に対して解説します。
17目標のゴール8とは
SDGsゴール8は、持続的な経済成長の促進が狙いとなっています。
その実現に向けて経済格差をなくすことも重要であることから、すべての人の完全かつ生産的な雇用と、働きがいのある人間らしい労働の達成を目標としています。
若い世代の地域雇用を促進しよう
世界から見た生産性の低さ1や、ブラック企業問題などの解決に向けて、働き方改革に取り組む企業が増えてきました。
しかし日本全体を見渡すと、まだに人間らしい働きがいのある労働環境の実現には至っていません。
労働における男女格差、ジェンダー平等が、2019年時点でまだ先進国で最下位であることからも、これが企業経営の最優先課題だといえるでしょう。
SDGsゴール8は、差別のない人間らしい働き方、「ディーセントワーク」を促進して、経済成長を続けながら同時に本質的な豊かさを実現する目標とも言えます。
また、日本は97%が中小企業です。
人口減少と超高齢化を迎えた今、若い世代を地域で雇用し、地域経済に貢献していくことは、SDGsゴール8達成に貢献すると共に、多様な働き方の実現にもつながります。
ゴール8の問題・課題
【目標8 働きがいも経済成長も】に対して、世界が直面している主な問題・課題は以下の内容です。
列挙している内容は、一例に過ぎません。
・開発途上国のなかでも特に開発が遅れている後発開発途上国の実質GDP成長率は、2018年4.5%、2019年に4.8%に達したが、新型コロナウイルスのパンデミックにより2020年は0.8%まで低下すると予想されている。2021年以降は4.6%に回復する見込みだが、目標の7%には遠く及んでいない。
・2019年の世界の失業率は5.4%だったが、北アフリカと西アジアでは10.7%だった。また、女性の失業率は男性よりも9%高く、世界の若年層の失業率も13.6%で、成人の4.0%より9.6%も高かった。
・2018年には、世界の若者の5分の1が教育、雇用、訓練のいずれにも従事していない「ニート」だった。なかでも中央アジア、南アジア、北アフリカ、西アジアでは深刻な状況、若者の4分の1以上がニートだった。
例えば、2016年の世界経済フォーラムによると、それぞれの企業がSDGsを達成することで2030年までに最大で3.8億人の新しい雇用が世界中で生まれると見られています。
また、その経済価値は少なくとも1,310兆円ほどになります。
これは、ビジネスの力なくしてSDGsは達成し得ないことを意味しています。
ゴール8のターゲット
ゴール8に対して、具体的なターゲットが設けられています。
以下の内容がターゲットになります。
8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率 7%の成長率を保つ。
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。
8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
8.6 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
8.10 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。
8.a 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
8.b 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。
ゴール8の企業事例
SDGsにおけるゴール8を解決・解消するために活動している企業を一つご紹介します。
Everlane
シンプルで上質な衣類とファッション雑貨を販売する、アメリカ発のオンラインブランド「Everlane」があります。
原料の調達から、契約工場の賃金や労働環境にまで貫かれた、エシカルへのこだわりでも共感を呼んでいます。
しかし最大の特徴は、「徹底した透明性」を創出しています。
消費者の知る権利を尊重し、各商品の材料費から人件費、輸送費まで、原価を開示しています。
結果として各工程それぞれにおいての適正価格が実現し、関わる人すべての豊かさにつながっています。
Everlaneでは、企業として以下の問いを設けて活動するようになったようです。
・顧客や取引先が豊かな生活を得ることが可能な提供価格になっているか?
・不当に自社だけの豊かさを追求した価格と利益確保になっていないか?
・その価格は関係者と地域の幸せに貢献できているか?
・ロ短期的な利益だけでなく、長期的な安定と安心を実現する価格設定になっているか?
これらの問いに対する問題・課題を解決/解消することで、SDGsの目標を達成しようと取り組んでいます。
まとめ
SDGsにおける各目標を理解するために必要な情報を収集することが世界的問題を解決する第一歩です。
・SDGsとは何か
・SDGsにおける17目標とは何か
・SDGsという抽象化された内容から各ゴールへの結びつきを理解できているか
・各ゴールは何を解決するために存在するのか
・企業事例をもとに取り組める内容はあるのか
これらの内容を把握することで、企業/個人におけるSDGsへの取り組み方が可視化されていきます。